一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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CFEコラム

NTTデータのサイバーセキュリティ発表会から読み解く、組織の不正リスクと内部統制の強化

NTTデータが開催した「サイバーセキュリティ最前線」発表会では、生成AIの悪用による新たな脅威や、ゼロトラストアーキテクチャ導入における課題など、現代の組織が直面する多岐にわたるセキュリティリスクが浮き彫りになりました。これらの事例から、CFE(公認不正検査士)の視点で、組織の不正リスクと内部統制の強化について考察したいと思います。

生成AIの悪用と不正リスク

生成AIは、その高度な機能ゆえに、悪意を持った者によって巧妙な不正行為に利用される可能性を秘めています。例えば、生成AIによる偽情報の拡散は、企業の評判を毀損したり、投資家の判断を誤らせるなど、深刻な被害をもたらす可能性があります。

CFE(公認不正検査士)の観点から見ると、生成AIの悪用は、以下の点で組織の不正リスクを高めます。

証拠隠滅: 生成AIは、偽の文書やデータを生成することで、不正行為の証拠を隠滅したり、その存在を曖昧にする可能性があります。

なりすまし: 生成AIは、特定の人物の声や文章を模倣することで、なりすましによる不正行為を可能にします。

自動化: 生成AIは、従来人が行っていた不正行為を自動化し、その効率を高める可能性があります。

ゼロトラストアーキテクチャ導入と内部統制の強化

NTTデータが導入したゼロトラストアーキテクチャは、組織のセキュリティを強化する上で有効な手段の一つです。しかし、その導入には、多様な課題が伴うことも明らかになりました。

グローバルな組織における標準化の難しさ: 異なる地域や部門で、セキュリティ基準や規制が異なる場合、統一的なセキュリティ対策を推進することは容易ではありません。

従業員の意識改革: 新しいセキュリティ対策の導入に伴い、従業員の意識改革が不可欠となります。

技術的な課題: 新しい技術の導入には、技術的な課題やコストも伴います。

これらの課題を克服するためには、以下の点が重要です。

トップダウンによるコミットメント: 組織全体でセキュリティに対する意識を高め、具体的な行動計画を策定し実行していく必要があります。

従業員への教育と啓発: セキュリティに関する教育を定期的に実施し、従業員の意識を高めることが重要です。

内部監査の強化: 定期的な内部監査を実施し、セキュリティ対策が適切に機能しているかを確認する必要があります。

インシデント対応計画の策定: 万が一、セキュリティインシデントが発生した場合に備え、迅速かつ適切な対応ができるよう、インシデント対応計画を策定しておく必要があります。

組織の不正リスクと内部統制の強化に向けた提言

生成AIの悪用や、ゼロトラストアーキテクチャ導入における課題など、現代の組織はますます複雑化する不正リスクに直面しています。これらのリスクに対抗し、組織の健全性を維持するためには、以下の点に留意する必要があります。

人材育成: 不正検知や防止に関する専門知識を持つ人材の育成が不可欠です。

技術の活用: AIやデータ分析などの最新技術を活用し、不正行為を早期に検知する仕組みを構築する必要があります。

内部統制の強化: 内部統制の各要素(統制環境、リスク評価、統制活動、情報伝達、モニタリング)を強化し、組織全体のガバナンス体制を強化する必要があります。

外部専門家との連携: 必要に応じて、外部の専門家(不正検査士、セキュリティコンサルタントなど)に相談し、客観的な視点からアドバイスを受けることが重要です。

NTTデータの発表会で取り上げられた内容は、現代の組織が抱えるセキュリティリスクの深刻さを改めて認識させるとともに、CFE(公認不正検査士)の役割の重要性を示唆しています。CFE(公認不正検査士)は、これらのリスクに対抗し、組織の健全性を維持するための重要な存在と言えるでしょう。

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