2025年の総括と2026年への展望:不正対策の「自律」と「専門性」が問われる時代へ
2025年の振り返り:相次ぐ「信頼の揺らぎ」と不正の高度化
2025年は、日本企業にとって「信頼」の基盤が改めて問われる1年となりました。 本年発生した主な不正事案を振り返ると、金融機関での巨額の資産窃取、製造業における長年の品質データ改ざん、新興企業の会計不正、そしてサプライチェーンを狙った巧妙なサイバー攻撃など、その手口は組織の深部に根ざし、かつ高度化しています。
これまで「日本企業の倫理観」という性善説に頼ってきたガバナンスは、今や構造的な限界を迎えています。組織の慢心やDX化の遅れが、意図せずして不正の「機会」を与えてしまっていた事実は否めません。
欧米に学ぶ「独立した不正調査部門(SIU)」というモデル
こうした事態を未然に防ぎ、あるいは早期に自浄作用を働かせるために、今注目されているのが欧米型の「SIU(Special Investigation Unit:特別調査部門)」です。
これは法務や内部監査の一部門ではなく、執行部門から完全に独立し、取締役会に直接報告を行う常設の「調査専門組織」です。フォレンジック(電子鑑識)を内製化し、心理学に基づいた高度なヒアリングを行うこの組織は、欧米企業においてガバナンスの要となっています。
日本版SIUの構築と、公認不正検査士(CFE)への期待
日本においても、2025年の教訓を経て、こうした専門組織の構築が急務となっています。しかし、単に箱(部署)を作るだけでは意味がありません。そこで鍵となるのが、公認不正検査士(CFE)の存在です。
日本版SIU、あるいはそれに準ずる専門チームにおいて、CFEは以下の役割を果たすことが期待されています。
専門知の集約: 会計・法務・調査手法・犯罪心理という4つの領域を横断するCFEが、組織内の「不正の兆候」を科学的に分析する。
客観性と独立性の担保: 国際資格に裏打ちされた職業倫理を持つCFEが、社内の人間関係に忖度せず、客観的な事実に基づいた調査を遂行する。
「守り」から「攻め」のガバナンスへ: 有事の調査だけでなく、CFEが平時からリスク評価を行うことで、不正を「起こさせない」強靭な組織文化を醸成する。
当協会は、日本企業が欧米のような独立した調査機能を自社に最適化して導入する際、その中核を担うのはCFEであると確信しています。
2026年への期待:CFEが拓く、組織と社会の進化
2025年に設立20周年を迎えたACFE JAPANは、2026年を「不正対策の自律元年」と位置づけます。
「価値創造のガバナンス」へ: 不正のないクリーンな組織こそが、最大の資産となる時代です。
テクノロジーとの共生: AIによる検知と、CFEによる洞察を組み合わせた次世代の調査体制を構築します。
専門家コミュニティの深化: CFEを核として、企業・弁護士・会計士が連携し、日本全体のコンプライアンスを底上げします。
不祥事をゼロにすることは容易ではありません。しかし、CFEという専門家を組織の要所に配置し、独立した調査機能を整えることで、リスクは確実にコントロール可能となります。
2026年、私たちは「不正のない社会」の実現に向け、CFEの皆さまと共に、日本企業の新たな信頼構築を力強く支援してまいります。