材料高騰と関税ショックが誘発する企業不正~いま求められる「リスク感度」と「倫理的判断力」
2025年、世界経済は再び揺れ動いています。コメや小麦などの食料品、半導体や金属類、建材、化学原料など、私たちの生活や産業を支えるあらゆる「材料」が高騰を続けています。背景には、気候変動、戦争や政情不安、物流の停滞、そしてアメリカ・中国の対立などが複雑に絡み合っています。
さらに、今年1月のトランプ大統領再就任に伴い、米国の通商政策は再び保護主義色を強め、関税引き上げや貿易制限の動きが加速しています。いわゆる「関税ショック第2波」が現実となりつつあり、日本企業を含む多国籍サプライチェーンはかつてない調達コストの圧力に直面しています。
■ 圧力が「不正の芽」を生むフロー
経済的逆風が吹くと、企業内部には「何としても乗り切らなければならない」というプレッシャーが高まり、しばしば不正のトリガーとなります。これは、不正のトライアングルに照らしても明らかです。
動機(圧力):業績悪化、利益目標の達成困難、サプライヤーとの価格交渉不調
機会:監視の緩い購買・調達部門、国際取引のブラックボックス化
正当化:今だけだから、自社を守るため、誰も困らない
たとえば以下のような不正行為が実際に発生するリスクが高まります。
・原価操作、仕入価格の虚偽報告、粉飾決算
・偽装表示(例:産地・等級・原材料の虚偽)
・サプライヤーとの癒着、不透明な入札・契約
・水増し発注や横流しによる裏金作り
・不正輸出入、関税逃れの操作
■ 「仕方なかった」では済まされない時代へ
厳しい経済環境は、確かに企業の判断を難しくします。しかし、「今は非常事態だから」という言い訳が、倫理や法令遵守を超えて許されることはありません。とりわけ食品や医薬、エネルギー、建設など人々の生活に直結する業種では、不正の代償は極めて大きなものになります。
不正が発覚すれば、法的制裁に加え、企業のブランド、信用、そして従業員の士気が深く傷つくことは避けられません。
■ 不正リスクを見抜く「プロフェッショナル」の力
こうしたリスクの高まる時代にこそ、求められるのが不正リスクの兆候を早期に察知し、調査・防止できる専門家の存在です。
それが、ACFEが認定するCFE(公認不正検査士)です。
CFEは、会計・監査・法務・調査・倫理の知見を組み合わせ、不正の起点となる兆候を読み解きます。サプライチェーンや購買管理に潜むリスクの洗い出し、内部通報制度の整備、国際贈収賄規制対応など、企業の健全性を保つための現場力を持っています。
■ 最後に──
「倫理的な経営」はコストではなく資産材料高騰や関税ショックという外的要因は、企業経営にとって厳しい現実です。しかし、その中で「不正に手を染めない覚悟と仕組み」を持つことこそが、長期的な信頼と持続可能な成長につながる鍵です。
ACFE JAPANは、CFE資格の普及と不正リスク対策の支援を通じて、日本企業の不正抑止力を高め、透明性ある経済社会の実現に貢献してまいります。